ムジカのぶろぐ。By @ryoushitsu

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映画「鬼滅」の熱狂に見たアニメの新しい稼ぎ方 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準



アニメを起点とするコンテンツ群のマネタイズにおける、ニューノーマル

わたしは鬼滅の刃について、この作品がコンテンツ産業のあり方を変えた、とは思わない。むしろ、ここ数年で結実したアニメという産業の細胞分裂および貪欲なまでの他産業への侵食ぶりが先にあり、素晴らしいコンテンツが現れた。その結果、ここまでのモンスター級作品を生み出す土壌が大量の養分を作品に与え、見事に結実した。と思うのである。まず基本として作品の素晴らしさがあり、それをアニメ化、ノベライズと横展開していく。そのなかでテレビで放送するのか、それとも動画配信サービスで配信するのか。じゃない。テレビはSNSに反応が即現れる。つまり、動画配信サービスが主流で、テレビは不要。ではなく、テレビはSNSを湧かせる。そして湧いたことで興味を持つ人達が動画配信サービスにたどり着く。そこからファン層の厚みがでてくる。その後、アニメから単行本に行く人もいる。ジャンプを買い求めるコアなファンもいただろう。ノベライズ版だって。今回、わたしはこの作品が面白いとは聞いていたがどうしても親である私は小学生の娘にこれを見せたいと思えなかった。理由はかんたん。グロテスクすぎる。血が出るだけならまだいい。首が飛ぶ。体がズタズタに刻まれる。禰豆子さんが串刺しにされる。こんな作品見せられるか。そんなわたしだが、今朝たまたまネットでノベライズ版の存在を知る。見てみると、なんと、兄妹の絆編、那田蜘蛛山編、そして、無限列車編と3冊あるではないか。中身を見てみるとなるほど子ども向けにしてあって挿絵はあるものの、グロテスクな場面は絵になっていない。素晴らしい!わたしは感嘆の声を上げ、すぐさま近くの本屋で無限列車編を購入した。よくよく考えたらこれはすごいことかもしれない。この作品がいま劇場化されているのだ。漫画単行本で既に公開されていることでタイムラグなく、見たい時に好きなフォーマットで無限列車編を楽しむことができる贅沢さ。しかも同時に。このタイムラグの無さが今ぽいと思った。1度興味を持ったら、テレビを見る、動画配信サービスを見る。気に入ったら映画が用意されている。しかも、映画はTVシリーズの続きだ。TVシリーズを見た層はすんなり見るだろう。漫画版を読んでいる人も映像化が気になってみる。ノベライズ版はあのグロテスクな映像を見せたくないわたしのような親に訴求した。結果お買い上げである。もっと言えばさぞグロテスクな映像になっているだろうと予測がたつ無限列車編に我が家が課金することはまずない。ないのだが、ノベライズ版に課金することで解決した。それは700円だが、映画なら1人1100円。子どもは800円とか?大人2人と合わせて3000円はかかるところを700円で済んだのだ。しかも読みたい時にいつでも読める。素晴らしい。内容も素晴らしい。しっかりと文学となっていて小説に慣れ親しむ私でも読み応えという意味では文句がない。挿絵も沢山あり、小学生の娘は半日で食い入るように読み終わった。鬼滅の刃アニメ版という駅から出発したこの一連のブームは、各種動画配信サービスの売上に貢献したばかりか、自身の単行本の売上を押し上げつつ、続く各種コラボ商品の売上も爆発させた。そしてノベライズ版はあの映像に辟易するであろう我が家のことまでマーケティングされている。……としたら、恐ろしい。見事だ。鬼滅の刃、というか、漫画原作が持つ可能性をリブートしたかのようなアニメ版が始発駅なら、終着駅は映画ではない。まだまだ続く第2期のTVシリーズであり、映画の毎年恒例化である。鬼滅の刃が持つコンテンツの強さ、人を惹きつける人間ドラマは、コロナ禍に負けないあらたなニューノーマルのように捉えられることもあるが、わたしはそう思わない。これは、週間漫画雑誌編集者の情熱、アニメ版担当者の作品愛、それらを売り出す広告代理店、テレビ局の手腕。それらが見事に噛み合った、まさにアニメコンテンツのあるべきスタンダードモデルである。誰がテレビはオワコンだと言った?テレビは起爆剤だ。テレビが無ければ話題にならない。それはインターネットがどんなに進んでも、紙媒体が無くならないのとおなじ。人の目に触れるツールとしてテレビは、紙媒体は形を変え、存在し続けていく。道具はあくまで道具だ。使うのは人間。道具が悪い訳では無い。上手な使い方があるのだ。そのことを強く、感じさせてくれた。それが、紙媒体を生業とする私に、勇気を与えてくれるのだから、まったく鬼滅の刃は奥が深い。

 

それじゃあ、またね(了)